関連キーワードを操作せよ——「サジェスト汚染」の恐怖

2017年11月28日ネット文化ネット文化

 

スクリーンショット 2014-05-05 3.36.19

 

近年インターネット、とくに2ちゃんねるで行われているのが、「サジェスト汚染」と呼ばれる、関連キーワードを用いた攻撃方法である。「サジェスト汚染」とはどのようなことを指すのか、なぜ起こってしまうのか、そしてその効果は……本記事では、「サジェスト汚染」の恐ろしさについて、包括的に扱うこととしよう。

サジェスト汚染とは

Google検索やYahoo検索には、「サジェスト」なる機能が備わっている。入力バーに検索キーワードを入れただけで、写真のようなプルダウンが現れるはずだ。また、検索結果の画面にも、次のような「関連キーワード」が表示されることが多々ある。

スクリーンショット 2014-05-05 3.39.26スクリーンショット 2014-05-05 3.36.19

サジェスト汚染とは、この検索エンジンによる検索語句やその関連語句を操作すること行為を指す。例えば、特定の個人名を入れたり、社名を入れたときに、関連語句に「アホ」「ブラック」などのワードが出てくることがあるだろう。このような関連語句は、もしかしたら「サジェスト汚染」によって行われたものであるのかも知れない。

サジェスト汚染の効果

定量的な効果はさておき、定性的なそれについて考えてみよう。

例えば特定の人物を中傷したいとき、つまり特定の人物の悪い噂を流したいとき、効果的なのは、「その人物について調べようと思っている人間」に対し、当該人物の悪いイメージを植え付けることにある。サジェスト汚染とは、まさにそのことを端的に実現してくれる。

「山田太郎」という人物に興味が興味を持っている人間が、「山田太郎」で検索をすると、関連結果に「強姦魔」が登場する……これだけで彼のイメージは地の底へと転落するであろう。サジェスト汚染は、まさに本人が介入できないところで、その人物の社会的信用を著しく下げる効果を持っている。だからこそ、危険なのだ。事実、米国ではサジェストにより被害を受けたとして、Googleが訴えられた事例が存在する。

サジェスト汚染をする方法

サジェスト汚染をするためには、Googleの関連キーワード表示にアルゴリズムを表面から判明させなくてはならない。しかしそれは不可能だ。そこで、現在は経験的に積み上げられた「サジェストキーワードとする方法」を悪用することで、上記を実現している。

その方法は至って簡単である。たとえば「山田太郎」という人物に「可愛い」という関連キーワードを付与したいとする。そのような場合、そのふたつの単語が同時に出てくる回数を上げてやれば、サジェストキーワードとして提示されやすくなる。

よく、2ちゃんねるのスレッドには、「山田太郎 可愛い 男 …」とキーワードだけ羅列した書き込みがあり、それにたいし「ほんまにこれ」「マジか」などのアンカー付きのレスが行われていることが多い。しかも、同じキーワードによって、様々なスレッドで行われている。

これは、2ちゃんねるを自動的にまとめるサイトを念頭に置いて行われている。2ちゃんねるの内部でこれを行うだけでは、ほとんど効果は無い。しかし多くの「自動まとめサイト」にこのスレッドが転載されたとき、アンカーが多くついている書き込みは強調表示されるに至る。そして、Googleの検索エンジンは「強調表示されているところは重要なキーワードである」と考えるため、キーワードの関連性は高まる。おなじことが様々なサイトで行われ、かつサイト間リンクまで行われた場合、Googleのアルゴリズムの関係上、それらキーワードは密接に結びついていく。

この段階で、検索窓に同じキーワードでの検索を大量に行う。すると、アルゴリズムは「これらのキーワードは多くの人が求めており、かつ重要である」と判断するため、関連キーワードに組み込まれ、サジェストにおいても出てくるようになる。まさにこれが、「サジェスト汚染」の行われ方なのだ。

汚染されたキーワードはどうなるか

汚染されたキーワードは、人為的に作られたものであるため、なかなか検索されることは無く、だからすぐに関連キーワードからも除外されるのでは無いか……と思ってはいけない。むしろ、関連キーワードに乗った瞬間、その「奇妙な組み合わせ」に人々は興味を持ち、なんとなくクリックしてしまう。クリックされ続ける限り、そのキーワードは永遠にサジェストに乗り続ける。つまり、一度関連キーワードとして表示されれば、その関連キーワードは「面白さ」「アングラっぽさ」を持っている以上、人々の興味をそそり、クリックされ続ける。こうして、サジェスト汚染は終幕せず、むしろ「普通」となっていく。そして最終的に、汚染の対象とされた人物は、永遠に苦しむこととなるのだ。

最近の方法

SEO/SEMではなく、この分野においても研究が進められている。そのため、たとえば「画像検索をうまく用いてサジェストにいれる方法」なども実践されている。また、Googleは特定キーワードをサジェストから除外しているため、その除外キーワードの見極めも随時行われている(というのも、除外キーワードが入った瞬間、その全体がサジェストされなくなってしまうためだ)。検索エンジンとSEO業者のいたちごっこと同じ事がここでも起こっている。

以上が、サジェスト汚染の現状である。あなたが検索し、関連キーワードに何かが出てきたとしても、そのキーワードは全く関連しておらず、このような形でこじつけられたものなのかもしれない。

 

Posted by webnetforce